毎年、この時期になるとさ、必ず来るものがあるんだ。 何がって? カードだよ、メッセージカード。 誰宛てだって? 父上だよ、うちの父上。そう。 もっとずっと小さい頃にさ、それ、なぁにって訊いたことがあったわけ。 それで、見せてもらったらさあ、読めない字ばっかなんだよ、これが。 だからさ、ボク、思わず云っちゃったんだよね。 なにコレ? 読めないよって。 父上はなんて答えたのかって? ん〜? 笑って……爆笑とかじゃなくてさ、にっこり……でもないな。ほんのちょっと笑ったんだ。 それでさ、一枚ずつ、見せながら、何語で書いてあるか説明してくれたんだよね。 ――これとこれ……これもじゃな。このへんのやつは英語。 こっちのやつは、中国語。 これはロシア語。 こっちはドイツ語。 それと、こっちはスペイン語。 それから、これは日本語じゃ。 あとは、のう――。 一枚ずつ、説明しながらさ、父上、すっごい嬉しそうに目を細めてたんだよね。 そう、ものすごく嬉しそうに。 一枚ずつ、ホント、大事そうに手に持っては、大切そうに眺めてたよ。 うん、ボクもね、なんて書いてあるか、気になってしょうがなくてさ、もちろん聞いたよ。 なんて書いてあったのかって? それがさ〜、聞いてよ。 結局、全部、おんなじ文章なの、『――』っだって。 そう、言葉が違うだけで、み〜んな、一緒。 もう、HFの先生達もいい年してよくやるよね、ってかんじ。 ……そう、毎年。 聞いたこっちのほうが恥ずかしくなるよ、まったく。 …………まあ、ボクは凛子ちゃんになら、してほし〜なあ〜、なんちゃって。 え? 凛子ちゃん? どこ行くの? ねえってば〜。凛子ちゃあん。 『誕生日、おめでとう。キン肉マン』
――――今年も、貴方が生まれた日に、感謝と祝いの言葉を。 了
04年弥生下旬 |
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