呆れ顔のミートに続いて現れた兄弟の姿に、仲間達は唖然とするよりなかった。

 思いもがけないというか、普通、ありえない状態に、流石に皆、咄嗟に言葉が出てこなかった。
「……キン肉マン。一体、何を……」
「キンちゃん、それはちょっと悪目立ちしとる思うわ」
 それでも、目を丸くしてテリーマンが呟き、傍らのナツコが頷きながら指摘を入れれば。
 それを皮切りに、あんぐりと開かれていた口から、各々言葉がこぼれだした。
「ひどいですわ、スグル様! わたしが腕を組んでもすぐ放そうとなさるくせに!」
「――キン肉マンもアタル様も、一体、何をしているのだ」
「いくら寒いからって、それはないだろう、キン肉マン」
「ソルジャーも、それは可笑しいだろうよ」
 ビビンバの不平や、ラーメンマンやブロッケンJr.、バッファローマンらの言葉に、当の二人は不思議そうに顔を見合わせる。
「――まさか、そのまま歩いてきたのか?」
「日本で、それは止めといたほうがいいぜ」
 怪訝なロビンの疑惑に、同行していたミートが溜息をつくことで、その疑問を肯定した。
 それを見て、思わずウルフマンが嘆息交じりに友人をたしなめる。
「……年の近い兄弟は、普通こういうものなのか?」
「――多分、違うと思うズラ」
 そんな、仲間達の様相を見ながら、ぽつり、とウォーズマンが呟けば。
 ジェロニモが複雑そうな表情で、顔を横に振った……。

 アタルのロングコートに兄弟二人でくるまりながら、兄の腰に両腕を回して抱きついているキン肉マンの姿は。
 群集の中でも一際目に付いた――――。



『寒い日には』(10年1月初出)
管理人には、寒くなると肉兄弟を密着させたくなる何かが存在するようです(失笑)
「どうして教えてくれなかったんだ」
 どこか口惜しげな口調と、残念そうな表情で、そう言われて。
 キン肉マンは、大きな目を更に大きく見開いた。
「何故じゃと言われても、のう」
 困惑の滲む声音で呟いて、ぽりぽりと指先で頬を掻く。
 それから、傍らのウルフマンに、ちらり、と視線を向けた。
 助けを求めるようなキン肉マンの視線に、ウルフマンは微苦笑を浮かべて首を振り。その隣のブロッケンJr.も微笑って肩をすくめた。
 新しく出来た友人達の援護がないと知り、困り果てた顔でキン肉マンは正面に向き直り――、吐息混じりに呟きこぼした。
「……わざわざ言わねばならんことかのう」
 ぽつり、そう言えば。
「教えてくれればいいだろう」
 即座に親友は言い切った。
「知っていれば、それなりに祝うに決まっているじゃないか」
 少しばかり面白くなさそうに、テリーマンがそう言い足せば、キン肉マンはますます困った表情をした。
「まして、去年は日本にいたんだぞ」
「いうても、オリンピックの決勝直前じゃったんじゃがのう……」
 無念と言わんばかりに歯噛みするテリーマンの言葉に、ぼそり、とキン肉マンが呟く。
 それを聞き、ブロッケンJr.とウルフマンは出かかった笑い声を飲み込んだ。
「来年は、ちゃんと祝うぞ、キン肉マン」
「お……おお」
 妙に気合の入った一言を吐き出して、親友の肩をしっかと掴むテリーマンに気負いまけし、反射的にキン肉マンは頷いた。



「教えるも何も……忘れておっただけなんじゃがのう……。誕生日じゃということを」
 やる気に溢れた親友と向かい合いながら、キン肉マンが口中で呟いた言葉は、誰の耳にも入ることはなかった。



『教えてくれよ!』(10年4月初出)
更新が遅刻だったので、祝えなかったヴァージョンにしてみた。スグル誕を毎年欠かさないことは既に意地です。
 スグル、と、名を呼べば、すぐさま振り返り、あけっぴろげな笑顔で小首を傾げ、なんじゃ、と訊きかえした。

「――今日は、お前の誕生日だな」

 前置きの言葉を告げれば、そうじゃったかのう、と、また首を傾げる。

「――おめでとう」

 何より重要な本題を口にすれば。
 弟は、目を丸くして――、それから、はあ、と、大きく息を吐き出した。
 その仕草に、今度はこちらが首を傾げる。

「どうした?」
「それはこっちの台詞じゃ、兄さん。そんな真剣な目をしとるから、何事かと思ったわい」
「そうか?」
「そうじゃ、怖いくらい真剣な顔じゃから、何を言われるか、ドキドキしたぞ」

 言いながら。吐息を一つついて、兄の肩に手を置く。
 それから、慌てたように顔を上げた。

「おお、そうじゃ、兄さん」

 そして。
 兄の顔を凝視しながら、弟は満面を笑み崩れさせた。

「ありがとう、兄さん。兄さんから、おめでとうと言ってもらえて、嬉しいのう」

 破願する弟に、兄は目を細め、それから、悪戯っぽくこう言った。

「その内に食傷気味になるやもしれんぞ。なにせ、言いそびれていた分は二十五年分あるからな」

 その言葉に。
 弟は、また、目を丸くした。



『いえなかったことばを、』(11年4月初出)
スグル誕SSは桜がイメージなので、毎年枠色がピンク系でマンネリ化してると気付く(失笑)

Back

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送