ほかほかと。 温かげに湯気をたてる白いそれに、いただきまーす、と呟いてかぶりつき。 「あつぅ!」 内部にひかえた肉汁の反撃にあい、キン肉マンは悲鳴をあげた。 「大丈夫ですか、王子!?」 飛び上がるキン肉マンに、ミートもびくりと肩を震わせて声をあげる。 そのリアクションに慌てたテリーマンが差し出した缶コーヒーを、一息に煽って再びキン肉マンは熱さに悶絶した。 その様相に、心配半分呆れ半分でウルフマンが傍らにかがみこむ。 「おいおい、慌てるなって、キン肉マン」 「うう〜」 口を開けて舌を出すキン肉マンを、ブロッケンJr.も「大丈夫か?」と訊きながら頭上から覗き込む。その横でジェロニモが心配そうにわたわたと慌てていた。 その輪の中心で。 少し落ち着いたらしいキン肉マンは、ちらりと、自身の足元に視線を落とす。 「う〜。おとしてしもうた〜」 そして、舌を出しながら、少し滑舌悪く無念の呟きをこぼした。 その言葉に、周囲の面々は思わず失笑した。 「なんだよ、それは」 「まったく、食い意地が張りすぎだろう」 くくく、と笑うブロッケンJr.の後ろで、ラーメンマンが溜息混じりに言えば、恨めしそうにキン肉マンはその発言者を見上げた。 「勿体無いじゃろ〜。一口しか食っておらんかったのじゃぞ」 「分かった、分かった。もう一個買ってやるよ」 不貞腐れたような親友の発言に、笑みを浮かべながらテリーマンがそう言えば。 現金なもので、キン肉マンは、ぱっと表情を明るくして、「テリー、大好きじゃ〜」と、親友に抱きついた。 「……お前達、一体、何事だ?」 「――何か、あったのか?」 コンビニ特有のチャイムとともに自動ドアから出てきたロビンマスクとウォーズマンが、先に外に出ていた仲間達を見て、首を傾げながらそう問うが。 ラーメンマンとミートが溜息混じりに肩をすくめて軽く首を横に振り。 ジェロニモが困ったように微笑して。 ブロッケンJr.とウルフマンが笑いを噛み殺しながら。 テリーマンに抱きつくキン肉マンへ、無言で見やるばかりだった。 『あなたとコンビに・・・』(14年1月初出) |
常日頃、スキンシップ過多の傾向がある主人兄弟なのだが。 桜並木の下で、仲良く寄り添うスグルとアタルの姿を背中から眺め――、ミートは溜息ともなにともつかぬ吐息をこぼした。 花見がしたい、と言い出したのはスグルだった。 それに、ウルフマンが同意し、興味をひかれた他国出身の仲間達も、あれよあれよという間に同行が決まって、桜の名所に超人達が集まったわけだ。 かわるがわるに友人達に囲まれていたスグルだったが、一人佇み桜を眺める兄の下に突進していったのが、つい先刻のこと。 長く生き別れていた兄弟であると知る仲間達は、おもんばかって、あえて距離を取り二人きりにしていた。かくいうミートも、兄弟水入らずの姿を遠くから見守るにとどめていたわけだが。 ふう、と。 吐息を一つつき、ミートは小さく首を振った。 兄弟の仲が良いことは、実に微笑ましいことだ。 交わす言葉は聞こえないが、二人が睦まじく話す様を見て、ミートも心温まる思いでいた。 しかし。 何を言ったのかは分からぬが、唐突にアタルがスグルをきつく抱きしめた。 驚いたように暴れるスグルに構わず、幾ばくかの間、アタルは弟を抱きしめ――、その後からだ。 「――アタル様も王子も、本当にスキンシップ過多ですよ……」 ぽつり、と呟くと。 「確かに」 「アレはやりすぎだな」 と、周囲の超人達から微笑まじりの同意の声があがった。 「仲が良いのは、いいことだと思うズラ」 「悪いとは言わねえけどなぁ」 「まあ、キン肉マンが嬉しそうだし、いいんじゃないか?」 笑いながら。 彼らが向けた視線の先では。 二人の兄弟が、仲良く手をつなぎ――しかも所謂“恋人つなぎ”というやつだ――、桜の花を眺める姿があった。 『桜の下で』 14年4月 |
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